Tommy Chase
トミー・チェイスは1980年代初頭のブリティッシュ・ジャズ・シーンで活躍したドラマーです。バズ・フェ・ジャズやポール・マーフィ、そしてジャイルス・ピーターソンといったDJたちが火付け役となった、エレクトリック・ボール・ルームやワグ、ディングウォールズなどのクラブを拠点とした「ジャズで踊る」シーンに欠かすことの出来ない貴重な存在でした。
当初は一部の好事家たちによるごくごく小さな動きでしかありませんでしたが、このダンスジャズの流れはやがてカリブ海からの移民たちが奏でるヘヴィ・ベースやサウンドシステム、モッドやガレージ流れのユース・カルチャー、そして機材の進化に起因した全く新しいエレクトロニックなダンス・ミュージックまでも巻き込んだより大きなハイブリッド・ムーヴメントとなり、ご存知の通り、「アシッドジャズ」の名で世界中へと波及してゆきました。
そう、彼こそがアシッドジャズのルーツのひとつと言えるのです。
今回BGPによって再発される1984年オリジナル・リリースの『Hard!』という作品もまた、当時のダンスジャズ・シーンのヴィヴィッドな躍動感がそのままいまに伝わるような、洗練されたダンサブルなサウンドがたっぷりと詰め込まれた好盤です。
古くからのクラブジャズ・ファンは勿論のこと、ファイヴ・コーナーズ・クインテットやここ最近のニコラ・コンテ、ジェラルド・フリジナあたりをキッカケにこの種の音楽に聴き入るようになったリスナーにもレコメンドしたい、温故知新な一枚です。
(K)
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